暁に見る夢 22


ベッドの上に横たえると、流石に成樹は少し怯えたような目で寿樹を見上げていた。
そんな表情を見れば、寿樹にも成樹が無理していることは痛いほどに判っていたが、
「ごめん…なるべく優しくするつもりだけど…押さえ切れないかもしれない」
「寿樹…」
一つ一つシャツのボタンを外していけば、その都度、成樹の身体がピクリと震えて。
これから行われる行為に対する不安で一杯だということは判っていた。
だが、
「無茶したら…ごめん。でも、本当に大事に思ってるから…」
「…うん、判ってるよ…寿樹…」
サラリとシャツを肌蹴れば、飛び込んでくるのは白い胸で。
その傷一つない肌に吸い込まれるように唇を寄せる。
初めはそっと触れるだけのように。
だが、いつしか嵐のような激情を感じると、寿樹は貪るようにその肌に朱の痕を刻んでいった。
「に…成樹、成樹…」
「あっ…やっ…寿樹っ…んんっ!」
細い項や小さな胸飾りやありとあらゆる場所を啄ばんで、成樹に歓喜の悲鳴を上げさせる。
その一つ一つの反応が嬉しくて、寿樹はまるで喰らいつくかのように成樹の身体を味わった。
特にくっきりと浮かぶ鎖骨の辺りにKissを落とせば、くすぐったいのか成樹が小さな悲鳴とともに身をよじらせていた。
「や…そこばっか…り…んっ…」
その反応が愛しくて執拗に甘噛みすれば、自分の腹部にあたる成樹のモノが蜜を滴らせていることに気がつく。
「ココ…感じる?」
「そん…な、わか…ないっ…」
既に一杯一杯の成樹にしてみれば、これが感じているということなのかも判らなくて。
しかし、寿樹が身体のラインに沿うように口唇を落とし、いつの間にかに立ちあがっていた自身のモノに到達すると流石に悲鳴をあげた。
「あ、待って、ちょっと…待っ…!」
「もう待てない。俺だけのモノになってくれるんだよね、成樹…?」
「あ…ああ…でも…っ…ああっ!」
自身のモノを銜えられながら喋られればそれだけで耐性のない成樹はあっさりと達してしまった。
こんなに簡単にイッてしまったことも、寿樹の口の中に出してしまったことも、成樹には衝撃的すぎて。
だが、寿樹の嬉しそうな表情が見えれば、それだけで幸せな気分にもなる。
しかし、
「…え?」
達したばかりで硬度をなくした自身のモノを綺麗に舐め上げて、更に舌先を後腔へと進めると、寿樹は丹念に
「や、やだ…寿樹、そんなトコ…汚な…っ…」
「綺麗だよ、成樹のココは。ホントに綺麗…」
性格同様に慎ましくすぼまった後腔は今まで誰の眼にも晒されたことがないことを証明するように綺麗な桃色で。
この神聖な場所に自分の猛ったモノを押し込めることが、禁忌を犯す暴挙の様にさえ思えてしまう。
それでも今更やめる気など微塵もなくて。
少しでも傷つけないようにと丹念に舐めあげれば、まるで受け入れることを認めるかのようにゆっくりと解れていくのが判った。
一方の成樹のほうは、勿論男同士のセックスであれば、そこで受け入れるということは知識では判っている。
しかもそこは本来何かを受け入れる場所ではないのだから、それなりに準備が必要なことも。
だが、自分でも滅多に触れることのない部分を寿樹に弄られて、平静でいられるほどの度胸は成樹にはなかった。
ましてや、時折足に触れる寿樹のモノが硬く屹立していることに気がついて。
直接見たわけではないが、その大きさと硬度に無意識に怯えが走る。
それでも、どれだけ寿樹が自分を押さえようとしているかが成樹にはよく判っていたから、
「も…いい…からっ…」
「駄目だよ、もう少し解さないと…傷つけたくないし…」
「いいよ、酷くしても…お前になら…何されても…っ」
どうせ禁忌を犯してしまうなら、それさえ忘れてしまうくらいに溺れたいと。
そう願って強請れば、寿樹は涙が零れそうなほどに嬉しそうだった。
そしてそこまで想われていると気づけば、到底無理になんてできるはずもなく、
「酷くなんてできないよ。大事に…大事にするからね、だから…全部俺に頂戴…ね?」
「あっ…ああ…いいよ…っ…!」
そう微笑んで許してくれる最愛の人の表情を見ながら、寿樹は己の欲望を押し込めた。



そして、その数時間後 ――
「やっぱり無理させちゃったね。ごめん、兄…成樹」
白いシーツに沈み込む成樹の身体を綺麗に清めると、寿樹はそっとその頬に口付けた。
初めてだというのに、かなり無理をさせてしまったことは否めない。
せっかく巻いていた手の包帯も解けてしまって ―― 傷口が開かなかったことが幸いだった。
それほど余裕がなくて無茶をしたというのに、それでも、眠っている成樹は幸せそうで。
「もう離さないよ、成樹。アンタは俺だけのものだ」
そう囁くと、そっとの成樹の隣に潜りこんだ。



そろそろ暁の空が窓から見えることだろう。
その中で見る夢は ―― きっと最高に幸せなものだと寿樹は信じていた。






Fin.





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初出:2007.10.20.
改訂:2014.10.05.

Paine