Pussy Cats 08


翌日は朝から台風一過の澄み渡る晴天が広がっていた。
「ん…っ、眩しい…」
明け方近くまで散々なかされた祐介の声は掠れきって、身動きもままならないようだ。
あれほど乱れて強請って、よがり狂っていたのが嘘のようにあどけない表情で眠る姿は、まさに天使のようで。
もう少し寝かせておいてやりたいのも本音だが ―― 流石に汚れた身体のままでは可哀相にも思えた。
それに、祐介へのお仕置きはともかく、もう一人にも『借り』を返しおかないと ―― 尚樹としてはどうも落ち着かない。
そう思ってベッドから抜け出ると、人肌が消えるのに気が付いたのか、ふと祐介が顔を上げた。
「せん…ぱい…?」
まだ半分寝ぼけたようで、だが甘えきった表情にどこかおいていかれるような不安げな影を残して。
全く、罪作りなヤツだな。そんな顔をされたら ―― 一瞬だって手放せなくなるぞ。
そんなことを思いながら、
「一寸待ってろ、風呂の用意をしてきてやるからな。すぐに戻る」
「ホント? じゃあ…待ってる…」
それだけいうとコトンと再び目を閉じて、安心しきって眠りに落ちる。
そんな寝顔にチュっと唇を落すと、そのままバスローブを引っ掛けてリビングに出た。
軽くバスタブを洗って湯を張って、それを待つ間にとある場所に電話をかける。
そして、
「さて…と、じゃあ、祐介を洗ってやるか」
我ながら鬼畜だなと思いつつ、何も知らずに眠る祐介を連れに、尚樹は寝室へと戻った。



そして、週明け ――



「尚樹! お前…何考えてんだよっ!」
定刻に登校した尚樹達を待ち構えていたのは、今回はしっかり世話になった慶一郎だった。
「その様子だと、荷物が届いたようだな?」
「ああ、ったく、どーゆー了見だっ!」
「随分と心外な言い方だな。今回は世話になったから、俺からの礼だ。遠慮せずに受け取っておけ」
「な…何が『礼』だっ! あんな…」
「おや? 気に入らなかったか?」
そんなはずははないだろうと突っ込めば、いやその、ごにょごにょと言いよどんで。
しかし、慶一郎は、
「…ったく、直哉になんて説明するんだよ…」
「心配するな。実際に使ってやれば悦ぶんじゃないのか?」
そもそもお前だって満更ではないくせにと言えば、
「お前らと一緒にするなっ! 直哉は奥手なんだからなっ!」
「どー言う意味だっ! 祐介だって奥ゆかしくて可愛いぞっ!」
「ああ、そうだよな。それなのにお前みたいな鬼畜野郎に掴まって。マジに可哀相だゼ」
「そう言うことだけはお前には言われたくないぞ!」
「どっちが!」
―― と、朝の校門前で怒鳴りあういいオトコが二人。
それを遠巻きに見ていた中には思いっきり人前で惚気の対象になっている祐介と直哉がいて ――
「直哉先輩、この前はどうもありがとうございました」
「いいえ、どういたしまして。ところで、唐沢君なら知ってる?」
「何が ―― です?」
「あのね、五十嵐君から『この前の礼だ』って、首輪を貰ったんだけどね」
「首輪 ―― ですか? え? ルーチェの?」
「うん、でもサイズが全然大きいんだ。大型犬用なのかな? それに、内側にボアが入ってて、ふかふかしてるんだよ」
「えっ?」
「それにね、ヘンなの。両手脚用もあって、全部鎖で繋がってるんだよね。あれじゃあ、散歩も出来ないと思うんだけど」
「え? ええっ ―― ///」


飼い猫には ―― 首輪をつけておけとのささやかなプレゼント。
その意味を、何故か祐介がわかったのは ―― ?






Fin.




07


50,001HitをGetしたKouサマからのリクエスト作です。

「尚樹×祐介と慶一郎×直哉の2カップルで、祐介と直哉がルーチェ通して仲良くなって、
祐介が慶一郎のマンションにお邪魔することに… 」
…と頂いたのですが、さて、いかがでしょう?

まずはルーチェが祐介に拾われました…というか、寧ろ祐介を拾ってます。(笑)
カッコイイ彼氏を持つと、付き合うほうは大変ですよね。
それでなくても祐介の場合、どうしても克己の影がちらつくし…

そして、尚樹はあの女の子たちに何をしたかも…ちょっと気になります。(苦笑)
その上、心配した分お仕置きは…v
最近、段々尚樹の性格が鬼畜化してきている気がします。(滝汗)

お楽しみ(?)いただけましたら幸いです。
では〜(脱兎!)


初出:2004.07.19.
改訂:2014.09.28.

Silverry moon light