邂逅 00


古代エジプト史において ――
最も繁栄を極めたのは,、「新王国時代」といわれる、第18〜20王朝においてである。

初めて「王家の谷」に墓を造ったトトメス一世。
初の女王として即位したハトシェプスト女王。
エジプトの領土が最大規模となったのはトトメス三世の対外進出によるもの。
そして、かのツタンカーメン王が即位したのもこの新王国時代であった。

しかし、その少し前まで、エジプトは遊牧民族であるヒクソスによって初の異民族王朝が成立するという屈辱も受けていた。
中王国時代の末期、国内の混乱に乗じてデルタの殆どを支配したヒクソスは、馬と戦車を初めてエジプトに伝えた強大な軍事力を持っており、その力の差は歴然であった。

ところが、その強大な力をもってしても、エジプトの首都「百門の都」と歌われたテーベ(現在のルクソール)を落すことは適わなかった。
花の都テーベは国家神アメン・ラー神の加護で守られていると民衆にも讃えられる所以である。

そこでヒクソスの知者たちは、アメン・ラー神に対抗できる神を呼び起こすことを決断した。
そして ――
数多い荒神の中から選ばれたのは、かつては王国の主神の地位にありながら、政争に敗れたために没落していたセト神官団であった。


ちなみに ―― このセト神官団が崇拝するセト神は竜神でもあったという。






邂逅 01


初出:2004.02.25.
改訂:2006.07.09.