Ultimate Guardian 01


目が覚めると、そこには唯一絶対のしもべが待っていた。





「アズラエル…か?」
「キュウ…キュルルル…?」(お目覚めですか、セト様?)
自分の寝ている寝台を取り囲むように守るそのしもべにそっと手を伸ばすと、それは決して幻ではない証拠に、ひんやりとした鱗の感触が伝わってきた。
硬く覆われた鱗はその気になれば触れただけで人の肌も容易く裂いてしまうはず。
だがそれが唯一の主であれば ―― 決して傷つけたりなどせず、むしろあるはずのないぬくもりさえも与えようとするようだ。
「ああ…もう朝か?」
ゆっくりと身体を起こせば、グラリと眩暈が襲ってきて。
セトは再び寝台に倒れこみそうになるが、硬い寝台にぶつかる前にふわりと何かに抱きとめられる。
「キュル…ルルル…」(大丈夫ですか? まだお休みになっていた方が…)
優しく包み込んでくれるしもべは本当に心配そうで。
自分と同じ蒼穹を潤ませながら、そっと頬を摺り寄せてきた。
「済まん、アズラエル。まだ本調子ではないようだ」
そんな言葉は、ここ数年使ったことがないといっても良いほどで。
だが相手が己の半身とも言える白き龍であれば、何の躊躇いもなく紡がれるというもの。
「キュルルル…」(ご無理をなさらないでください、セト様)
「もう少し…横になっていたほうが良いか…?」
「キュウ…キュルルル…ルル…」(はい、私がお側をお守りしておりますので…)
尻尾で抱きとめていたセトの体をゆっくりと寝台に戻し、アズラエルは再び取り囲むようにその場に伏せた。
そうして、寝台に横たわるセトの視線に併せるように伏せれば、全ての喧騒は遠い異国の出来事のようにセトの周囲から排除されていく。
「キュウ…キュルルル…」(ごゆっくりお休みなさいませ、セト様)
「ああ、お休み…」
そう呟くと同時に安心しきったような寝息が静かに零れて、セトは再び安らぐように眠りの園へと落ちていった。






Ultimate Guardian 02


初出:2004.11.13.
改訂:2006.07.19.

ぐらん・ふくや・かふぇ