Ultimate Guardian 02


「熱っ…って、あれ、ここは?」
じりじりと肌を刺すような暑さに耐えかねてユギが目を覚ますと、そこは全く見覚えのないオアシスだった。
ほんの申し訳程度の泉と、さらにごく僅かの緑の茂み。
あとは見渡す限りの砂漠で、人の気配どころか生き物の気配すらない。
いや ――
「ん? あれは…」
見れば、数日のうちには涸れてしまうのではと思われるほどの泉の中央に、何やら赤い物体が浮かんでいる。
なけなしの記憶を手繰ってみればそれはかなり「不快」という棚に分類されていたものだが、まぁ一応覚えのあるモノで。
「…しょうがないな」
ぶつぶつと不満そうに呟きながらもジャバジャバと水の中に入り、とりあえずソレをもう一度沈めてみた。
すると、
「だーっ! この、クソファラオ! 何しやがるっ!」
突然起き上がったその物体には、人種の入り混じったエジプトでも珍しい白い髪と、頬に傷を持つ顔がついていて、
「…なんだ、まだ生きてたのか」
「殺すなっー!」
思い切り元気よく起き上がったものの、流石にダメージは回復されきっていない様子。
再び水の中に座り込むと、自称盗賊王と名乗るバクラは忌々しげな目で睨み上げてきた。
「ったく、わざわざ止めを刺しに来たとでもいうつもりか? フン、返り討ちにしてやるぜ」
「…いや、そういうわけでもないんだがな」
そう応えながら、やはりユギも暑さのせいか水の中に身体を沈めて、
「とりあえず、ここはどこだ、と聞きたいんだが?」
「はぁ〜?」
「いや、セトといちゃついてたところまでは覚えがあるんだけどな。明け方に気を失ったセトを綺麗にしてやった後からが、覚えがない」
「明け方までって…それ、惚気かよ?」
「フフン、俺とセトは相思相愛のラブラブカップルだぜ☆」
「へぇ〜そのラブラブカップルのはずが、何でここに放り捨てられてるってぇ訳だ?」
思い切り邪悪な笑みで聞き返せば、ユギも思い当たることは唯一つ。
「…そうだった。そういえば、貴様こそセトにちょっかい出しやがって。思い切りバレた挙句に青眼にバーストストリームを食らってたよな?」
夕べは ―― ヒクソスとの大戦の折になくなったとされている魔道書があるらしいとか何とか言い出して、セトを呼び出そうとしていたのはバクラの方。
勿論それはバクラが並べた嘘八百(バラしたのはユギの方)で、当然だまされて大人しく引っ込むセト ―― と青眼ではないから。
特大バーストストリームを食らって、砂漠の彼方に放りやられるのはいつものお約束。
そして青眼がセトから離れたその隙に、バクラにちょっかい出されなかったかと押し倒したのはユギだったりするわけだった。
「そーゆー王サマだって、青眼がいたら手も足も出せねぇんだよな?」
ヒャーハハハと思い切り高笑いされれば ―― 流石にカッととが昇るもの。
「貴様…やっぱり殺すっ! 出でよ、オシリスっ!」
「フン、返り討ちだ! 出ろ、ディアバウンド!」
思い切り威勢よく己のしもべを呼ぶ二人だが ―― 待てど暮らせどしもべは姿を現さず…
「あ…れ? 千年錐は?」
「俺サマの千年輪!」
いつも首からぶら下げているはずのものがないことに、漸く気がつく二人である。






Ultimate Guardian 01 /  Ultimate Guardian 03


初出:2004.11.13.
改訂:2006.07.19.

ぐらん・ふくや・かふぇ