ドラゴンの宝珠 03


「ひっ…ぁっ…」
ひんやりとした感覚が全身を包み、自然と声が零れる。
それを恥ずかしくは思っても打ち寄せる快楽には抗えず、瀬人は左の手の甲を口に持っていって噛み付くように押さえた。
しかし、
『押さえなくていいですよ。感じたままに、声に出して?』
「…なに…っ?」
頭の中に直接響くような声を感じた瞬間、その手はやんわりと剥がされてシーツに押さえつけられる。
そこへ、ヒヤッとした感触が胸の飾りを摘み上げれば ―― 瀬人の身体は、陸に上げられた白魚のように跳ね上がった。
「やぁっ…!」
仰向けに寝かされた身体は既に一糸も纏ってはおらず、身悶えた足がシーツを蹴って震えている。
そんな足の先からチロチロと冷たい舌が舐め上げて、時折啄ばむように内股の柔らかい肌に痕を残した。
そうかと思えば、脇腹や胸の辺りをじんわりと這い上がって、細い項に纏わり付き ――
「やめっ…くっ…ぅ…」
ゾクゾクと沸き起こる快楽には抵抗などできるはずもなく、瀬人はいつしか涙を流しながら、熱い吐息にまみれていた。
性的な行為についてなら、この年齢では経験の多い瀬人である。
それもみな、男として行為をする方ではなく、男でありながら受ける方で。
そもそもは亡き義父が己のビジネスのためにと強要したものから始まったことで、相手も殆どが海馬コーポレーションの取引に関わるものが多かった。
つまりは、熟練した年上ばかりであって。
慣れている分、強要されたものはどれもねっとりとしたしつこさと淫猥さに満ちていて、何度舌を噛んでやろうかと思ったか知れないほどだ。
かと思えばつい最近では、あのデュエリスト・キングダムの地下牢でペガサスに ――
『ユーの身体はとても素晴らしいデース。汚しがいがありマース…』
愛だの恋だのといった綺麗なものでは決してない。どれもがみな、瀬人の身体だけを目的とした淫猥な行為。
それは綺麗なものを汚したいという人間の欲望にまみれたものでしかなく、その一方で、孤高すぎる魂には虫唾の走るものとしか思えなかったということは言うまでもない。
だが、そんな嫌悪すべき行為であったはずなのに、
「…ぁっ…ああっ…ん…」
元々感じやすい体質な上に、開発しつくされた身体である。既に声を抑えることは不可能に近い。
それどころか溺れてしまいそうなほどの快感のために、瀬人は既に何度か精を放っていた。
いつもなら、その前に惨めな姿をとらされて獣のように犯されているところだ。
もしくは気の短い下衆が相手であれば、殴られていたか、嬲られていたか ―― 。
しかし今はそんな屈辱は全くなく、それどころかもっともっとと瀬人の身体に眠る快楽を引き出してくる。
敏感な胸の飾りや脇腹、浮き出た鎖骨の辺りに啄ばむような痕を散らせながら、それでもまだ足りないというように瀬人の性感帯を刺激し続けて、
「はぁっ…あっ…ん…も…や…だぁっ…」
肌に感じる刺激は、今までに感じたことのない初めてのもので。。
しかもそれが同時に三箇所ともなれば ―― 溺れるなというほうが無理というものだ。
『ここが…気持ちいい? 瀬人ちゃん?』
「ああっ…ん…いいっ…」
『ここはどうです?』
「ひゃぁっ! ああっ!」
『もっと声を出せ、クリス。こちらもいいだろう?』
「ああっ!」
何度も精を放ったソレの先を舐め上げられ、柔らかい肉を啄ばまれ、硬く閉じた蕾を解すように、冷たいモノが入り込んでくる。
「ひぃっ…く…っ…」
流石にその侵入には不快感で身を硬くするが、やがて抜き差しするように瀬人の中で蠢き、更に質量を増していくとその感触は抗うことを許さない快楽へと変わっていった。
しかも、
「な…やっ…やだっ…そこっ…はぁっ!」
蕾の最奥にある隠された場所を探り当てられ、瀬人はその刺激に涙を流した。
「やめっ…やっ…あっ…ああっ…ん!」
最早零れる声も言葉にはならず、刻まれる律動に応えるように嬌声が上がるばかりだ。
更に、
『セト…さまっ…』
『瀬人ちゃん…』
『いくぞ、クリス。全てを解き放て ―― 』
いきなり質量が膨れ上がり、貫くようにその刺激が高ぶると、瀬人の目の前を弾けるような光が包み込んで ――
「あっ…ああーっ!」
全てを解き放った瀬人は、まるで母親の胎内 ―― 羊水の中に漂うような感覚を覚えながら、瀬人はゆっくりと深い眠りについていった。



そして、その翌朝 ――
―― チュン…チュンっ…
かすかに鳥の鳴き声が聞こえている朝日の中で、瀬人は幼い姿に戻って安らかに眠っていた。
まるでそれは神に抱かれて眠るかのように、安心しきった天使のようで。
「セト様…」
「クリス…」
「…瀬人ちゃん、可愛い…v」
そんな幼子を、三対の蒼穹が静かに見守る。
「暫くは…ゆっくりとお休みなさいませ、セト様。あとのことは我らに任せて ―― 」
そう囁いて柔らかな頬に口付けると、三人の瀬人は静かに部屋を後にした。






to be continued.




02


初出:2007.03.27.
改訂:2014.09.20.

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