Catch a cold ! Prologue


週明けの月曜日。
朝から童実野高校は異様な盛り上がりに満ちていた。
特に ―― 2年の教室のとある一角。



「やっぱり、忙しいのかなぁ〜」
のほほ〜んと呟くのは、言わずと知れた表遊戯。鞄の中身を机にしまいながら、ちらちらと隣の席を見つめている。
「でも、新作の発表が昨日でしょ? 絶対、今日は来ると思ったんだけどね」
とは杏子の台詞。
そう、昨日はKCが誇る次世代決闘盤(デュエルディスク)のヴァージョンアップ版が発表されたのだ。
当然、その反響は凄まじく、既に予約は埋まりどこも品切れ状態続出である。
「やっぱり雑誌の方にも載ってないね。極秘開発っていう噂だったもんね」
パラパラとゲーム雑誌をめくる獏良(こちらも当然、宿主サマの方)も、残念そうな表情は否めない。
「詳しい話を聞きたかったんだけどな〜。御伽君のお店の方には情報ないの?」
「うちはM&Wは置いてないからね。そういう遊戯君のところは?」
「うちみたいな小さな店じゃあね」
あはは…と遊戯と御伽は乾いた笑いでがっくりと肩を落す。
一方では、
「チェッ…海馬の野郎を巧く言いくるめて、ゲットしてやろうと思ってたのによ」
「…言いくるめられるのがオチだろうが」
とは城之内と本田である。
元々、実は登校拒否なのではないかと思えるほどに出席率の低い海馬瀬人である。
更には高校など通わなくても既にどこぞの外国の大学を出ているという噂もあり、一週間に一度でも顔を出せばいいほどとも言える。
ただ、海馬が社長をやっている「海馬コーポレーション」で、新作が発表された翌日は割りと学校に来る確率が高く ―― 要は市場リサーチみたいなものらしいが ―― 今日は来るだろうと踏んでいたのがこの連中である。
特に遊戯と城之内は懐具合もさびしい状況だったので、巧くすれば海馬から譲ってもらえるかな〜なんて甘い期待もあったわけで…。
期待が大きかった分、外れたショックは流石に甚大である。
「もう1人の僕も楽しみにしてたのにな…」
諦めきれない遊戯が呟くと、
「仕方がないわね。いいわ、モクバ君に聞いてみる!」
「え? 杏子?」
いや、この時間ならモクバも学校だろうとは誰もが思ったのだが、『もう1人の遊戯』のためならと杏子は携帯を手に取って教室を出た。
「…杏子ってモクバ君の携帯番号、何で知ってるの?」
「さぁ〜」
残された男どもはなす術がない。
ところが、ものの5分もたたないうちに杏子が戻ってきて、にわか状況が一変した。
「モクバ君に聞いたんだけど、海馬君、風邪引いて寝込んでるんだって」
「「「何ィ ―― !」」」
3つの声が見事に重なり ―― しかも遊戯はもう1人のユウギに、獏良も一瞬にしてバクラに代わっている。ちなみに3つめの声は、城之内であった。




01


攻サマ3人三様が見たいなぁ〜と思っての突発モノです。
時間考証は全くナシ。一応、3人ともがライバル視はしてるってコトで。


初出:2003.10.12.
改訂:2014.09.28.

evergreen