Fugitive 47


「さぁ、幸斗君。最初にすることはなんだったか、覚えているかな?」
全ての服を剥ぎ取って幸斗の裸身を晒すと、リーダー格の男 ―― 磯部はそう楽しそうに囁いた。
その残酷な声に、幸斗の白い身体に朱が走る。
「あ…いや…やだっ…」
両手は天上からぶら下がった鎖で引き上げられているため、一糸も纏わぬ身体を隠す術もないことは事実。
それでも幸斗はなんとか身体を隠そうと、身を捩って首を振った。
しかし、
「おやおや、困った子だね。早くお客様に可愛がって欲しいんでしょう? だったら、綺麗にしなくちゃいけないって、教えてあげたはずだよ?」
そう耳を舐めるように囁くと、磯部は側で控えていた二人の男を呼んだ。
「どうやら幸斗君は、嗜みも忘れてしまったようだからね。福島君、野村君。君達にも手伝ってもらおうかな?」
幸斗にはニッコリと残忍な笑みを浮かべたままでそう言えば、
「それはもう…」
「ええ、喜んで」
二人の男は、無意識に舌なめずりをしながら嬉しそうに答えた。
そして、まるで最初から手はずを打ち合わせていたかのように福島と呼ばれた男が幸斗の戒めをギリギリまで引き上げ、その間に野村が部屋の隅に設置された戸棚から大きな注射器を持ち出してくる。その注射器にはドロリとした液体が入っており、
「さぁ、幸斗君、綺麗にしてあげようね。判っているとは思うけど…粗相をしたらお仕置きをするよ」
そう喉の奥で笑いながら磯部が合図を送ると、野村は曝け出された幸斗の双丘を押し広げて、硬い蕾に注射器の先端を押し込んだ。
「いや…やめて、やめてーっ!」
途端に幸斗が泣き叫び、ジャラジャラと鎖の音を立てる。
だが、
「やっ…やだっ…あっ…」
胎内に逆流してくる生温い液体の質量に、カクカクと足が震えだす。
競りあがってくる排泄感は通常の比ではなく、まるで何倍にも腹部が膨らんだかのような錯覚まで感じるほどだ。
しかし、
「おやおや。後ろを綺麗にしようとしているのに、前も涎をたらすとはいけない子だね。粗相はいけないって言ったはずだよ?」
そういわれて涙で潤んだ目を開ければ、そこには浅ましい己の姿が映し出されていた。
グロテスクな注射器をまるで尻尾のように後ろに差し込みながら、まだ完全には屹立していなくても前の雄茎からは透明な液を滴らせて。
自分では嫌がって逃れようとしているつもりでも、鏡の中の自分の姿は、まるで喜んで腰を振るようにしか見えなくて。
「違う…ちが…やだぁっ!」
余りの浅ましさに泣き叫んで身を捩るが、そのたびに却って後ろの注射器は深く侵入して液を注ぎ込んでくる。
やがてその内包していた液体を全て幸斗の体内に流し込むと、野村は注射器を殊更ゆっくりと引き抜き、そのピストンの部分だけを再び幸斗の蕾に差し込んだ。
「いやぁーっ!」
無機質な感触は鳥肌がたつほどにおぞましい。
しかし、野村はそんな幸斗の様子など気にもせずピストン部分を突き立てると、今度はゆっくりと引き抜き、再び差し込んだ。
「きゃあっー!」
幸斗の体内では注ぎ込まれた液体がちゃぷちゃぷと音を立てるほどにかき混ぜられ、時折空気も含んでクプッと溢れて足を汚す。
いやそれだけではなく、少しでも気を緩めたら全てを吐き出してしまいそうで。
勿論、注ぎこまれた液体だけですまないことも、幸斗には判っている。
そしてこのまま嬲られていれば、結局この連中の視線に晒されたままで全てを吐き出すのも時間の問題であることは間違いなくて。
幸斗は無駄だと判っていながらも、縋るように磯部に懇願していた。
「お願い…です、トイレに行かせて…。自分で…る…から…っ…」
幾らなんでもこの年で、しかもこんな人前で漏らすようなことはしたくはない。
だが、そんな願いが叶えられることもないことは、幸斗自身が一番良く判っていた。
そう、これはまだ最初の関門。
この部屋に入ったら、次に出てくるときには人間としてのプライドなど微塵も残されることはないのだから。
そう、そのための訓練室なのだ。この部屋は。
だから、
「トイレ? 幸斗君はトイレに行きたいの?」
わざとらしくそう聞き返す磯部の声は、心の奥から楽しそうで。
それに一縷の望みをかけた幸斗は、必死で懇願した。
「う…んっ…お願い…で…」
「困ったねぇ。ここにはトイレはないんだよ? じゃあ、そのかわり…」
ぐちゅっ、ぐちゅっと野村が幸斗の身体の中身をかき混ぜる音だけが異様に響く。
それを、
「じゃあ、かき混ぜるのはこのくらいにしようかね」
そう言って急にやめさせただけでなく、勢いよく引き抜かせると、
「え? あ…ああっ!」
突然、堰を失ったため幸斗は生理的な排泄感を止めることもできず、欲望のままに全てを吐きだしていた。






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初出:2007.02.04.
改訂:2014.11.03.

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