Fugitive 54


―― ジリリリリ…!
けたたましい警報は磯部たちが篭っていた訓練室にも届いていた。
「うわっ!」
「な、何だっ!」
突然の騒音に驚いて、幸斗の口を犯していた福島が精を放ちながら引き抜いた。
また、幸斗の蕾をかき回していた野村の方も同じように途中で幸斗の身体を突き放したため、幸斗は全身に二人の精液を浴びながら床に倒れた。
「うぐぅっ…!」
受身も取れないままに投げ出されて、幸斗の身体が硬直する。
それというのも、
「おやおや、だから言ったでしょう? ちゃんと支えていないと、辛いのはキミですよって」
そう言って倒れた幸斗のそばに近づくと、磯部はリングでせき止められた幸斗の先端を軽くはじいた。
―― チリン…
「ひぃっ…!」
根元を締め付けるようにはめられたリングには、金属の輪が付けられており、それには細い鎖が3本延びている。
2本は、それぞれ幸斗の赤く熟れた乳首に付けられたクリップへと繋がっており、もう1本は ―― 幸斗の蜜口に深々と埋められたスティックに繋がっていた。
そしてクリップとスティックのそれぞれ鎖と繋がったところには金色の小さな鈴が付けられているため、幸斗の身体が跳ねるたびに綺麗な音を奏でていた。
音だけを聞いていれば、とても清浄な気分になることだろう。
しかし、その音がどうやって奏でられるかを知れば ―― 酷く淫猥で淫らだ。
幸斗の白い身体は既に何度も犯された福島と野村の精液が白くこびりつき、噛まれたり吸われた痕があちこちに鬱血となって現れている。
その上、真っ赤に熟れた両方の乳首も金色のクリップで挟まれた挙句、そのクリップにつけられた鎖は、精を吐き出すことを許さないリングの根元に繋がっているため、少しでも幸斗が解放を願って雄茎を床にでもつけようものなら、その刺激は敏感になりすぎている乳首にも伝えられるし、尿道を侵しているスティックにも直撃である。
おかげで気が狂いそうな感覚で溺れそうだというのに、磯部はそれだけで幸斗を許しはしなかった。
そんな状態な上に、今まで磯部の命令で福島のモノを口にほおばり、野村のモノを蕾に受け入れていたのだ。
これで気が狂わないでいられることの方が不思議なくらいだ。
しかし、
「ヤバイぜ」
「ああ、急げっ」
突然の警報に驚いた野村と福島は、そんな幸斗の様子などすっかり忘れたように床に落としていた自分達の服を手に取ると、着るのももどかしいように慌てて部屋を出て行こうとした。
それを、
「…どうしてやめるんです?」
不思議そうに見ていた磯部が引き止める。
「どうしてって…」
「聞こえないんですか? 警報ですよ。もしかしたら、手入れが入ったのかもしれないんですよ!」
元々非合法な組織であることは承知している二人である。
警察に捕まればただですまないことは判り切っていた。だからこそ、この警報に慌てた二人であったが、
「ああ、あの音ですか。本当に無粋な音ですね。でも…僕たちには関係ないでしょう?」
確かに、この部屋は防音などはかなり厳重に施されているということもあり、本来なら耳を劈くような音であるはずの警報も多少の耳障り程度であることは確かだ。
だが、警報が鳴らされているという非常時であるのに、磯部は全く驚くどころか慌てたそぶりもなく、いたって変わりがないのだ。
非常時に落ち着いている人間がいるということは、本来心強いものである。
だが、磯部のこの落ち着きにはそんな気配はなく、寧ろ ――
「今更止めるなんて、幸斗君が可愛そうですよ。さぁ、続きをしてあげてください」
そうニッコリと微笑んで言われても、福島や野村は最早そんな気は微塵もなかった。
「な…にを言って…るんです。それどころじゃないですよっ!」
「そうだ、逃げないとっ!」
とにかく下着とズボンを履いて上着をもどかしそうに羽織ながら二人はドアに駆け寄った。
そして、そのまま扉を開けっ放しで部屋を逃げ出していく。
ドアが開いた瞬間、けたたましい警報は更に音量を上げて部屋に飛び込んできていた。
その上、他の客室からも逃げ出してきたらしい大勢の叫び声や悲鳴も届き、磯部は漸く不愉快そうに眉を顰めた。
だが、
「…所詮はあの程度ですか。失望しましたね」
そう呟くと面倒そうにドアを閉め、
「可愛そうにね、幸斗君。でも心配はいりませんよ。僕は最後までつきあってあげますからね」
そう言ってニッコリと微笑むと、磯部は調教用の道具が入った引き出しから特大のバイブレーターを持ち出していた。






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初出:2007.03.11.
改訂:2014.11.03.

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