Fugitive 58


シーズンはずれではあったが貸し別荘内はそれなりに綺麗に整えられており、二階の言われた部屋のドアを開けると、裕司はベッドの上に幸斗の身体を置いた。
「…っぁ…」
できるだけ静かに身を横たえたつもりでも、今の幸斗には全てが過剰すぎる刺激になる。
そしてその刺激が更なる刺激を呼び起こして、白い身体を仰け反らせた。
すると、
―― チリン…
両方の胸と蜜口につけられた鈴が軽やかな音を奏でている。
できるだけ肌には触れないように、まるで火傷の皮膚を庇うかのように纏っていたシーツを剥がせば、そこには酷く扇情的な裸身が姿を現していた。
実際、今の幸斗は全身を火傷が襲っているようなものだ。
但し身を焼く炎は外からではなく、その内側から燃え滾っている。
両手首には手錠を嵌められ、胸にはクリップ。
そのクリップには細い鎖が付けられており、それはかわいそうなくらいに立ち上がった雄茎の先端に沈められている。
そして濡れそぼった蕾には ―― 流石に今は動くことはなかったが ―― 特大のバイブレーターを押し込められているはずで、その圧迫感のせいか、仰向けに寝かされることも苦しそうだ。
「…あっ…ああっ…ん…ゃ…ぁ…ん」
動けば気が狂いそうな快感に襲われて、じっとしていても精神を犯されて。
焦点の合わない瞳はまるで死んだ魚のように空ろとなり、ただ虚空にむかって嘆き続けていていた。
こうなってしまった状況を知らなければ ―― いや、例え知らされていても、一般の人間なら余りの淫猥さに誰もが侮蔑の視線を向けるだろう。
それこそ、街中でも平気で足を広げる娼婦よりもはるかに淫らである。
しかし、
「もう少しだけ…我慢しろ。ずっと側にいてやるから」
そう幸斗の耳元に囁くと、裕司は幸斗の折れそうなほどに細い腕を掴んだ。



苦しそうに身悶える幸斗の額に口付けると、裕司は手錠を嵌めたままの両手をベッドサイドに固定した。
そして、剥がしたシーツを引き裂いて紐状にすると、足を大きく開かせて縛り付ける。
「やだぁっ…いやっ…」
今まで、少しでも快感を逃がそうとして内股を擦るようにしていたために、それさえをできなくさせれば既に理性を飛ばしている幸斗である。
なんとか自由になりたくて、媚びた嬌声をあげはじめた。
「ぁぁっ…ん…ん、や、いやぁーっ!」
更に、裕司がそこに手を触れると、幸斗は背骨が折れるのではないかと思うほどに仰け反らせ、
―― チリン、チリン…
「やっ…やだっ…いた…ぁ…ぃっ…!」
胸のクリップに付けられた鈴がまるで喜ぶかのように音色をたて、更に幸斗の身体を苛み続ける。
しかし、
「少しだけ我慢してくれ。今外してやるから」
そう、裕司も苦しそうに呟くと、泣き叫ぶ幸斗に構わず雄茎を掴んで蜜口に触れた。
「やめてっ! いや…やだっ!」
「もう少しだから…動くなっ!」
「ひぃっ!」
何度も何度も抜き差しをされたため、細いスティックの先端は蜜口の中にうずまってしまっている。幸い細い鎖が付けられていたのでそれを引っ張れば抜くことは可能だが、無理にすれば傷となることは明らかだ。
かといって余りにゆっくりとすればそれは気が狂いそうな刺激となって幸斗を犯す。
そのため、少しでも紛らわせるようにと根元を押さえてやれば、それはまるで心臓がこちらに移動したのではないかと思うほどにドクドクと脈打っていた。
このまま上手に調教すれば、この先、排尿でさえもが快楽になるほどの淫乱な身体を作ることが可能だろう。
まさにセックスをするためだけの身体を。
だが、
(そんな…お前が欲しいわけじゃない)
泣きはらした瞳は、開かれてはいても何も見えてはいない。
身悶える身体が男を欲していても、それが幸斗の本当の願いでないことも判っている。
だから、
「少しだけ…少しだけ我慢してくれ、幸斗」
「や…な、なに…? …ひぃっ!」
ゆっくりと、だが着実に傷にならないように引き抜くと、その快感とどうしても感じてしまう痛みで幸斗が悲鳴を上げる。
そして、
「いやぁっー!」
その欲望をせき止めていたリングを緩めただけで、幸斗は断末魔のような嬌声を上げて自分の腹の上に白濁を吹き上げていた。






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初出:2007.04.08.
改訂:2014.11.03.

Studio Blue Moon