Strategy 03


地下の駐車場に停めていた黒いセドリックのドアを開けると、悟は無言のまま中に乗り込んだ。
その後に扉を閉め飛島も運転席に付く。チラリとルームミラーを見ると、どこか不機嫌そうな悟が慌ててプイと目をそらした。
「笹川不動産の社長にアポを取っております。少々早いですが、直行させていただいてよろしいですか?」
「…勝手にしろ」
長い足を組んで窓の外を眺める。飛島のことなど全く気に掛けていないようで、実はかなり意識しているのは見え透いていた。
それが判っているから、あえて飛島もそれ以上は話しかけようとはせず、おもむろに車を発進させた。
しばらくは車内に沈黙が続く。
悟は不機嫌な表情のまま外を見ているようで、実は見ていない。たまにちらちらとルームミラーに視線を向けるのがその証拠である。
一方で飛島のほうは相変わらずの無表情で前を見ていたが、やがてとあるホテルの地下駐車場に入るとその一角に車を停めた。
「時間がありますから、お茶でもしますか?」
運転席から降り、ドアを開けても悟は動こうとしない。しらっと言われて、悟は更に機嫌が悪そうに横を向いていた。
「どうされました? 随分とご不満のようですが?」
「お前が悪い」
「私が、何かしましたか?」
「…あいつらに頭なんか下げるな」
「はい?」
「お前は俺にだけ媚びてりゃいいんだよ!」
流石に飛島も表情が緩み、悟の顎に手をかけてこちらを向かせた。
「貴方があの人達に頭を下げたりするほうが許せませんから」
そう言いながら軽く口づけする。
すっかり拗ねている悟も、ほんの少しだけ頬を赤らめてそれに応えた。
「言ったはずです。貴方のためなら、私は何でもしますよ。貴方を苦しめたり、傷つけたりするものは決して許しません」
そう言って、今度は深く貪るような口付けを交わした。



飛島に促されるまま、悟はホテルの一室へと向かっていた。
「おい、笹川さんとの打ち合わせに、わざわざ部屋を取ったのか?」
フロントで渡されたキーで鍵を開け、飛島がドアを開ける。それに対してなんの躊躇も無く悟は中に入り、怪訝そうに尋ねた。
「部屋を取ったのは確かですが、打ち合わせはここではありません」
「何?」
「打ち合わせは下のロビーで、あと二時間ほどあります」
「じゃあ、なんで…あ、お前、また!」
やったなと言い終わらないうちに唇を塞がれる。
「先程はご不快にさせてしまいましたので、そのお詫びです」
「何がお詫びだ! お前がヤリたいだけだろうが!」
「おや、貴方は違うんですか? こんなに感じてるのに?」
といいながら、そっと悟のモノに手を触れてくる。
慣らされた身体はちょっとした刺激でもすぐに反応をしてしまい、すでに硬くなっているのは確かであった。
それが判るから、悟は悔しそうに顔をそらした。
その首筋に唇を落として耳朶を噛むと、悟の身体がビクッと震える。
飛島の腕をギュっと掴んでいる手にも震えが走り、そむけた横顔が熱い息を吐いている。
「どうします? 続けますか? それとも…」
「馬鹿…やろ…」
「全く、素直じゃないですね…」
ククッと苦笑しながら、飛島は巧みに悟のシャツのボタンを外し、自分も上着を脱いだ。
そして壁に押し付けて胸の突起を口に含むと、たまらなく悟が声を上げる。
そんな悟の様子などお構いなしに、飛島はベルトを外しズボンのボタンに手をかけ、あっという間に脱がしてしまった。
そして既に硬く張り詰めている悟のモノをゆっくりと手で包むと、悟の膝がガクッと震えていた。






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初出:2003.03.25.
改訂:2014.10.25.

Fairy Tail