ヤキモチ焼きの年下彼氏 06


(…で、なんでこうなるんだよ…?)
克己との話は楽しかったのだがどこでぼろが出るとも限らない。
だから早々にこの場は退散するかと思っていたのに ―― 何故か気が付くと、狭いテーブルに大の男が4人揃って座っているという図式が出来上がっていた。
方や、天使の微笑みが似合う絶世の美貌を誇る青年と、その青年をこれ見よがしに見せびらかしているとしか思えない、ただならぬ雰囲気の男。
もう片方は、これまたメンズモデル並のイケメン風な青年と、エリート実業家といった感じの男の組み合わせ。
はっきりいって、どういう繋がりなのだろうと、誰もが思わずにはいられないはず。
「何でお前まで来るんだよ」
がっくりと力なくうなだれる悟に対して、飛島は営業スマイルを浮かべると、
「雨が降ってきましたからね。貴方が傘を持ってないことは知ってましたし」
「だからって…」
「電話もかけたんですよ。でも携帯が繋がらなかったのですからね」
「あ、悪い。電池切れだった」
「そんなところじゃないかと思いました」
ニッコリと、あくまでも表面はそう見せている飛島が、実は思いっきり不機嫌であるということは、悟にはイヤというほど気が付いていた。
そこはそれ、伊達に長年付き合ってはいない。
その理由が ―― 多分、他の男と仲良く話していたという嫉妬心であろうということも ―― 薄々は気が付いていた。
この飛島という男。普段はクールなやり手実業家にしか見えないというのに、こと悟に関わることになると、恐ろしいほどのヤキモチ焼きなのである。
問題は、今回のジェラシーが克己と話していたというよりは、龍也に睨まれていた ―― アイコンタクトといえるかどうかは不明 ―― 方が理由らしいということで、いい加減その邪推振りにも腹が立ちかねない。
ところが、
「飛島さんも設計関係のお仕事ですか?」
一挙即発とまでは行かないまでも、どこかピリピリとした雰囲気の中、全くそれを判っていない克己だけがニコニコと穏やかに話を引き継いでいる。
「いえ、私は事務方です。元々、悟さんの秘書でしたので」
「あ、そうなんですか。え? 秘書って…」
確かに飛島は悟が葵建設の社長をしていた頃の秘書でもあり、その辺りの話をすれば、どこから小柴の話が漏れるとも限らない。
だから慌てた悟は話を遮ると、席を立って飛島を促した。
「あ、大したことじゃないから気にすんな。それより、そろそろ仕事に戻らないとな、ほら、飛島、帰るぞ」
「え? 悟…さん?」
突然の悟の行動に、流石の飛島も驚いて面食らっている。
一方、悟の気遣いに気が付いた龍也も、
「そうだな、俺も仕事が残ってる。克己、そろそろ帰るぞ」
「え、そうなの? 残念だな…もうちょっとお話したかったのに」
「今度にしろ」
といって席を立つと、問答無用で克己の腕を引き寄せた。
自然と抱きとめられるような格好になりながら、流石に人目を感じて克己が恥じらいを見せる。
「ちょ、ちょっと、龍也!」
「行くぞ」
そう言って、当然のように伝票を取り上げると龍也は克己を連れ去るように行ってしまった。



「…で、何なんだよ、お前。機嫌悪いだろ?」
あくまでも営業スマイル ―― 眼だけが笑ってないのはバレバレの飛島を、悟は負けずと不機嫌そうに睨みつけた。
「別に、機嫌悪くなんてありませんよ」
「嘘ばっか。バレバレなんだよ」
そういって長い足を組むと、胸のポケットから煙草を取り出して口に咥える。
と同時に飛島がライターを差し出し ―― この辺りのタイミングのよさはすばらしいものがある。
「バレて…ますか?」
「まぁな。どーせ俺が他の男と一緒にいたのが気に入らないとか言うんだろ?」
こういうパターンは今までにも何回かあったことなので、予想通りといえばそのままである。
尤も、当たっても嬉しくもなんともないのだが。
「ええ、まぁ…そんなところです」
「馬鹿か、お前は。野郎相手にヤキモチなんか焼くな。大体、そんなことを考えるのは、日本広しといっても、お前しかいないだろうが」
「そんなことはありません。貴方ほどの方はそうどこにもいるというものではありませんから」
「///…馬鹿、何言ってんだ! ったく…帰るぞ!」
真っ赤に染まった頬を見られるのが余程恥ずかしいのか、悟はさっさと立ち上がるとまるで飛島を振り切らんばかりに歩き出していた。






to be continued.…?




05話

ゆうちんサマからの33,333Hitリクです。

悟と克己が仲良くなって飛島と龍也がやきもちっていうのも考えたのですが、
悟が飛島の為にエプロンしてお料理もいいな〜とか考えがまとまりません。
とのことでしたので、まずは悟と克己の出会いから。

結構、この2人、いいコンビのようですね。
この2人のニアミスは前から考えていたのですが、書いてみてこんなに楽しいとは思いませんでした。

そして、頂いたお題の「エプロン」がまだなので、ちょっとおまけをつけてみました。
お時間のある方はどうぞ〜。(

それでは、今後も宜しくお願いいたします。


初出:2003.12.20.
改訂:2014.10.25.

Silverry moon light