あなたの1番欲しいもの 02


準備には異様に早い街中は、既にクリスマスの気配は一掃されて、今度はNew Yearバージョンへと様変わりしている。
何となくせわしい感じがするのは、おそらく誰もが年内中に厄介ごとを片付けてしまおうと思っているからで ―― 人の誕生日を厄介ごとというのはどうかとも思うのだが ―― 俺だって年内に片付けてすっきりさせてやる!と妙な意気込みにかける悟である。
しかし ――
「…ところで、アイツって何が欲しいんだ?」
さてどの店に行こうと思ったところで、悟は途方にくれてしまった。
飛島の欲しそうなものとやらに、全く心当たりがないのである。



「…で、俺を呼び出したって訳?」
駅前のファーストフードの3階で、シェイクのストローを咥えながら智樹が呟いた。
「悪いな、でも、マジで思いつかなくてな」
「ふ〜ん、隆志アニキの欲しいものねぇ〜」
智樹の目の前にはハンバーガーのランチセットに別の単品2つで、更にアップルパイとナゲットと…と、流石育ち盛りと豪語するだけはある。
「アイツってさ、無口だし、陰険だし、性格悪いし。な〜に考えてるんだか全く判らねぇし。そもそも趣味なんかなさそうだし、なんも思いつかなくってな」
「…凄い言われようだね、隆志アニキ…」
といいつつ、それでも一緒にいるんだから…とは口には出さない。
しかし
「でもさ、ホントに隆志アニキの欲しいものに、心当たりとかないの?」
「ない! 全くない。これは断言できる!」
「いや別に、そこまで断言してくれなくてもいいんだけど…」
力説する悟に、実は「欲しいもの」を知っている智樹としては何とも言えない。
(…って言うか、もう既に「欲しいモノ」は手にいれちゃってんだけどなぁ…)
かれこれ5年以上も虎視眈々と狙っていたモノ。
そのために、どれだけの策略を駆使したかを知っているのは極わずか。
ちなみに智樹もそれに協力させられたわけで ――
「う〜ん、そうだな。じゃあ、隆志アニキって、物欲は(一部を除いて)全くないから、旅行とか食事とかに誘ってみたら?」
そもそも一番欲しいモノ(モノ扱いしていいのか?)は既にGetしてるから、それと一緒のシチュエーションというのがベターなのではと思う智樹であるが、
「旅行って…ついこの前スペインに行ってきたばかりだぞ。メシなんかしょっちゅう行ってるし…」
どちらも飛島の奢りだけど ―― というのはこの際おいておく。
「あ、そうか。でも悟さんからのお誘いなら、アニキも大喜びだと思うぜ」
そこが肝心と強調すると、流石に悟は顔を真っ赤に染めて
「…な、何いってんだよっ! ガキのクセに…///」
と、思いっきりコーラを詰まらせていた。






01話 / 03話

初出:2003.12.27.
改訂:2014.10.25.

Silverry moon light