白竜降臨 07


このとき部屋にいたのは、遊戯、城之内、杏子、本田、獏良、御伽というクラスメート6人と、モクバ、青眼(瀬人)×3である。
このメンバーでは、勿論一番年少であるモクバが一番小さく、142cm。
次が遊戯で153cm。
それから、杏子、獏良、城之内、御伽、本田と続き、一番背が高いのは海馬になる。
しかし、
「全く、何事かと思えば…やはり貴様らか。相変わらずの騒々しさだな」
そう言う態度は相変わらずの高慢尊大。
やわらかそうな栗色の髪も、蒼穹の瞳の色も変わらない。
唯一つ、しかし決定的にいつもと違っていたのは
「何を呆けて見ているのだ? 貴様らと馴れ合う気はないぞ」
その声が、モクバの身長よりも低いところから発せられた ―― ということだった。



ドアだけでも一見してかなりの値打ちと思えそうなところであるが、それをまるで蹴破る勢いで現れたのは誰がどう見ても「海馬瀬人」であった。
栗色の髪に蒼穹の瞳。
白皙の肌はアンティークなビスクドールよりも綺麗で、まさしく生きた人形のよう。
そんな天使もかくやと思える美貌でありながら、立ち居振る舞いは自信満々、猪突猛進、実力行使。
立ち塞がるものは薙ぎ払い、媚びへつらう者は一笑で蹴散らし、他人の理解も協力も必要なしと言い切る「俺のロード」驀進中である。
勿論ここは海馬邸。その主である瀬人がこの屋敷にいて、なにやら来客らしいからと部屋を訪れただけなら問題はない。
しかし、
「モクバ。折角、貸してくれたお前の服だが…やはり少々、緩いな」
「あ、やっぱり? 兄サマは細いから…俺の服だとウエストが余っちゃうんだぜぃ。直ぐにデザイナーを手配するから、少しだけ我慢してね」
「ああ、すまぬな」
余りの驚きに咄嗟に声も出ない遊戯たちを完全に無視して、モクバと「瀬人」は何事もなかったかのように話をしていた。
そう、会話の内容だけなら、仲の良い兄弟の何気ない会話である ―― が。
実際にその光景を見てしまった遊戯たちには、にわかには信じがたいものだった。
勿論モクバの方はなんでもない。
いつものように甲斐甲斐しく兄の世話を焼く弟という感じで、そのことはここにいる者なら良く知っている光景である。
問題は ―― その「兄」の方。
いや、モクバとこうして並んでいるところを見ると ―― それは「兄」というよりは…
「…え? ホントに…海馬君なのっ!?」
いつもなら、5分もお互い立ったままで話をしていたら、首が痛くなるのではと思うほどの身長差があって。
よく響く声に、無礼もなにもあったものではなく見下ろしてくる蒼穹が綺麗で、正直なところ、遊戯(オモテの方)も憧れていたのは嘘ではない。
しかし、今の「瀬人」は ―― 口調はそのままだが、声は若干高めで。
栗色の髪はいつもにまして柔らかそうだし、蒼穹の瞳も心持ちいつもよりは穏やかに感じられる。
それというのも、おそらく、
「…フン、貴様の目は節穴か? 俺が俺でなくて、誰だというのだ!」
そう高飛車に言い放ったのは、どう見ても小学生 ―― それも低学年 ―― ほどしか身長のない男の子だったのである。






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初出:2007.01.21.
改訂:2014.09.20.

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